借金が苦しく、任意整理を検討しているという方の中には、次のような疑問を抱いている人がいます。
それは、「任意整理を複数回行うことができるのか?」という疑問。
例えば、過去に一度任意整理を行ったけれども、再度借金返済が困難になり、もう一度任意整理をして、返済を楽にしたい、といったケースです。
結論から言えば、任意整理は複数回行うことが可能です。
しかし、任意整理を2回以上行う場合には、いくつか注意すべき点があります。
今回は、任意整理を2回以上行う際のデメリットや注意点について説明していきます。
目次
任意整理は複数回することができる?
2回目以降の任意整理をおこなう際、考えられる気にすべき点は3つあります。
「司法書士・弁護士が依頼を受けてくれるのか」
「カード会社が任意整理に応じてくれるのか」
「複数回目の任意整理に効果はあるのか」
3つ目に関しては後ほど解説するので、ここでは一旦保留します。
まず、「司法書士・弁護士が依頼を受けてくれるのか」という疑問です。
結論から言えば、何回目の任意整理でも、司法書士・弁護士はできる限りの対応をしてくれます。
もちろん、依頼前の相談の時点で、任意整理が厳しそうだと判断された場合は、任意整理以外の方法を提案されることもあるでしょう。
しかし、任意整理で対応できそうだという判断や、依頼者本人の強い希望があれば、快く依頼を受けてくれますが、前回の任意整理において、計画された返済が滞ったり、そもそもの司法書や弁護士への費用が滞った場合は断られる可能性はあるでしょう。
次に、「カード会社が任意整理に応じてくれるのか」という疑問。
これはケースバイケースと言わざるをえません。
任意整理は債権者(お金を貸した人)との交渉。
相手がNOと言えばそれで交渉は終わってしまいます。
ですから、2回目以降の任意整理がうまくいくかどうかは相手を納得させられるかの交渉部分にかかってきますが、その交渉はなぜ2回目の任意整理が必要になったのかという理由にもかかってきます。
例えば、「〇〇という病気にかかり、収入が〇〇円減ったため再和解が必要である」などの理由です。
今のところ、こういった具体的な理由があれば内容にもよりますが、再和解を拒否されたことはありません。
⇒任意整理とは何かを詳しく解説!!
⇒任意整理の費用はいくら?費用の相場を把握しておこう
複数回目の任意整理、効果はあるの?
さて、先ほどあげた三つの疑問の最後、「複数回目の任意整理に効果はあるのか」について解説したいと思います。
そのために、まずは任意整理の仕組みについておさらいしましょう。
そもそも、任意整理とは、債権者(お金を貸した人)と交渉して、将来利息を免除してもらうというもの。
この将来利息というのは、何もせずにいると現状のまま完済まで毎月発生する利息の合計のことを指します。
たとえば、借金が100万円だったとすると、4年後に完済した場合は、合計134万円支払う予定となり、差額の34万円が将来利息ということになります。
200万円の借金を5年で完済する場合は、完済までに285万円を要し、元本との差額である85万円が将来利息となります。
任意整理では、この利息を免除してもらえるので、返済総額が減額されることになるのです。
さて、ここまでの説明から分かるように、任意整理では、基本的に元本(もともとの借入額)が減ることはありません。
その前提の上で、先の疑問に答えていきましょう。
「複数回目の任意整理に効果はあるのか」への回答は、2つのパターンにわけて考えられます。
一つは、「以前の任意整理後に新しくできた借金、もしくは以前には整理しなかった借金を任意整理する」というパターン。
たとえば、以前の任意整理の際には、整理しなかったカードローンを追加で整理したい、といったケースがこれにあたります。
このパターンでは、任意整理の効果がきちんと発揮されると言えるでしょう。
まだ任意整理を行なっていない借金には、まだ利息がかかっている状態なので、任意整理を行って利息を免除してもらえば、返済は楽になるでしょう。
もう一つは、「すでに任意整理をした借金を、再度任意整理する(再和解)」というパターン。
一度任意整理をして、月々の返済額が減ったけれども、いまだに返済が苦しい、というケースがこれにあたります。
残念ながらこのパターンでは、任意整理の効果は極めて薄いと言わざるをえません。
なぜなら、本来任意整理で免除されるはずの利息が、すでに免除されているからです。
一応、返済計画(あと何年で借金を完済するか)を見直してもらう、ということはできますが、銀行や金融業者が嫌がって、整理自体を断ってくる可能性が高いです。
ですから、一度任意整理をしたのにまだ返済が苦しい、という方は、任意整理以外の方法を検討した方が良いかもしれません。
例えば、一回目の任意整理で、300万円の借金を利息がカットされ、60回払いに計画されていると、毎月の返済額は5万円となります。
毎月5万円の返済をしていたが、収入の減少などが理由により、5万円が用意できなくなった場合、返済期間の見直しという形で任意整理ができる可能性があります。
もし仮に、30回分が返済し終わっていたとすると、残額は150万円となります。
二回目の任意整理により、150万円を60回払いに組み直せれば、毎月の返済額は2万5千円になりますので、収入の減少でも対応できる可能性がでてきます。
しかし、同一会社への二回目の任意整理は非常にハードルが高いです。
なぜなら、そもそも、一回目の任意整理によって債権者(任意整理された会社)は一切の利益を得られなくなってしまっていますので、二回目の任意整理を受けることによって、完済までの期間が長引き、回収までのリスクが高くなるためです。
それでも、二回目の任意整理を債権者に納得してもらうためには、一回目の任意整理の際の返済履歴が、遅延のない優秀な返済状況であることは最低条件でしょう。
詳しくは次項で解説しましょう。
⇒任意整理のデメリットは5つだけ|本当はデメリットじゃないことも??
⇒借金300万円の任意整理
任意整理を複数回おこなう際の注意点
複数回目の任意整理で最も気をつけたいのが、「滞納する前に相談する」ということです。
特に、「すでに任意整理をした借金を、再度任意整理する(再和解)」場合は、絶対に滞納してはいけません。
任意整理をする際に銀行・金融業者ととりかわす「和解契約書」には、任意整理後に滞納した場合の罰則が書かれています。
この罰則というのが、ほとんどの場合「残金の一括返済と、罰金」となっています。
たとえば、任意整理後で、残金が50万円という時に滞納をすると、50万円プラス罰金を一度に払わねばなりません。
多くの人は、そんな大金を一度に支払うのは難しいでしょう。
特に、任意整理後はブラックリスト状態になっているので、新たに借り入れをして返済する、ということもできません。
結果として、請求された額を払えず、債権者に訴えられてしまうこともあります。
ですから、一度任意整理した借金の返済が苦しいと感じたら、なるべく早く手を打つことが必要なのです。
その他任意整理の注意点
先ほども軽く触れたように、任意整理を行うと、5~7年間の「ブラックリスト状態」になります。
これは、個人の信用情報を扱う機関に事故案件として記録され、その間一切の借り入れができなくなる、というものです。
たとえば、ブラックリスト状態の人は、新たに自動車や住宅のローンを組むことができません。
それどころか、携帯を購入した際の分割払いもでないのです。
この点を見落としていると、任意整理後の計画が破綻したり、思わぬトラブルに巻き込まれたりするので、注意が必要です。
また、任意整理の回数に関わらず注意が必要なのが「出来るだけ早く相談する」ということです。
任意整理は、遅れれば遅れるほど、和解条件が厳しくなったり、手続き自体の成功率が下がるものです。
返済が苦しいと感じたら、なるべく早く司法書士・弁護士に相談しましょう。
⇒任意整理とブラックリストの関係
⇒任意整理をしても携帯電話・スマホは使える?機種変はできる?
⇒車を残して任意整理はできる?
まとめ
2回目以降の任意整理であっても、基本的には受け入れてくれるでしょう。
一方、「すでに任意整理をした借金を、再度任意整理する(再和解)」場合だと、効果もあまり望めず、銀行・金融業者側から断られる可能性も高くなります。
しかし、だからといって任意整理後の返済が苦しいのを、誰にも相談せず放置していると、取り返しのつかないことになってしまいます。
一刻も早く司法書士・弁護士に相談し、適した助言を貰うようにしましょう。