「借金の総量規制とは一体どういう制度なのだろう?」
「総量規制の対象外のカードもあるのだろうか?」
総量規制とは、2010年にできた法律で、借金のし過ぎで生活が破綻する債務者を保護するために作られた法律です。
総量規制は借金のし過ぎから我々消費者を保護してくれる制度ではありますが、総量規制の範囲外では全く借金ができなくなるかというと、そういうわけでもありません。
借金の属性や、利用する金融業者によっては、総量規制を意識することなく借金ができますし、例外となるケースも数多く存在します。
例えば、住宅ローンや銀行のカードローン、事業用ローンなどは総量規制の対象外となり、ある程度自由に借金をすることができたりします。
今回は、そのような総量規制の詳細と、対象外のカードについて解説していきましょう。
目次
総量規制とは?
そもそも、総量規制とは何なのでしょうか。
総量規制とは前述したとおり、債務者を借り過ぎによる生活破綻から守る制度であり、具体的には貸金業者が個人に対して、年収の1/3以上貸してはいけませんよ、という規制のことです。
例えば、年収360万円の方は、120万円以上の額を貸金業者から借りることができません。
総量規制ができた背景には、平成17~18年頃の多重債務者の増加や、経済的な理由での自殺者の増加があります。
これらの社会問題を改善するために、平成18年に貸金業法にメスが入ることになったというわけですね。
なお、貸金業者が総量規制を破って利用者の年収の1/3以上を貸し付けた場合、業務停止や登録取り消しなどの行政処分の対象となる可能性があります。
ちなみに、利用者には特に罰則はありません。
総量規制で言う「年収」とは?
総量規制とは、前述したとおり、年収の1/3を超える額を、貸金業者は貸し付けてはいけない、という規制でした。
それでは、年収とは何を指すのでしょうか。具体的には以下のようになります。
給与
貸金業法が指している給与とは、ボーナス、各種手当てを含めた給与の総額のことです。つまり、給与の「手取り」ではなく、「額面金額」を指しているということですね。
年金
年金には、公的年金(国民年金・厚生年金・旧共済年金)と私的年金(公的年金以外の年金)がありますが、どちらも貸金業法で言うところの年金に該当するとお考えいただければ結構です。
不動産の賃貸収入
家や土地の賃料収入に限らず、家賃の更新料や礼金、共益費なども含めるとしています。ただし、不動産賃貸業を事業として営んでいる場合は、その収入は含まれません。
個人事業による事業所得
個人事業として事業を営むことで得た収入も年収に該当します。具体的には、事業で得た売り上げから、経費などを引いた純利益を指しています。
年収に含まれないもの
総量規制で定める年収に該当する収入についてはお分かりいただけたと思います。それでは、年収に含まれないものにはどういったものがあるのでしょうか。具体的には、以下の収入は年収ではないとされています。
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年収の申告方法
このように、貸金業者は総量規制で貸付額が制限されているため、利用者の年収を把握しなければなりません。
それでは、貸金業者はどうやって利用者の年収を調べるのでしょうか。
これに関しては、実は利用者の自己申告でOKとされています。
厳密に言えば50万円以下であれば自己申告でOKです。
もし50万円を超える場合、または貸金業者からの借入総額が100万円を超えるときは、収入証明が必要になります。
例えば、甲カード会社から既に50万円を借りている方が、乙カード会社で60万円を借りようとした場合、乙カード会社からは収入証明を求められるというわけです。
収入証明として認められる書類は以下のような書類です。
- 給与の支払明細書(直近2ヶ月分以上)
- 確定申告書
- 源泉徴収票
- 青色申告決算書
- 収支内訳書
- 納税通知書
- 納税証明書
- 所得証明書
- 年金証書
- 年金通知書
- 支払調書
貸金業者とは?
金融業者にも色々と種類がありますが、貸金業法や総量規制が適用されるのは「貸金業者」のみとなります。
つまり、貸金業者以外の業者は、総量規制が適用されないので、個人に対しては年収に関係なく貸付けることができるというわけです。
ちなみに、貸金業者とは、内閣総理大臣または都道府県知事の許可を受けて登録し、お金の貸付けや貸し借りの仲介を行う業者のことです。
業種で言えば、消費者金融とクレジットカード会社は貸金業者になります。その他、リース会社やクラウドファンディングも貸金業者に分類されます。
消費者金融
消費者金融は、俗に言う「サラ金」ですね。個人に貸し付ける業者以外に、事業者に貸し付ける事業者ローン会社も含まれます。
商工ローン、ビジネスローンとも呼ばれています。
クレジットカード会社
クレジットカード会社はその名のとおり、クレジットカードを発行している会社です。
クレジットカードを利用したことのある方はご存知かと思いますが、ショッピング機能の他に、キャッシング機能が付いていますね。
そのため、クレジットカード会社も貸金業者の登録が必要になるわけです。
リース会社
リースはレンタルとよく間違えられますが、リース会社は利用者が選んだ商品を代わりに購入して長期間貸出すサービスである一方、レンタル会社は会社が所有しているものを貸出すサービスです。
リースは、利用者が商品代金を分割払いでリース会社に支払っていくことになるので、最終的には商品が利用者のものになります。
こういった形態から、リース会社は貸金業者に分類されるというわけですね。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、お金を借りたい人と、貸したい人をインターネット上でマッチングするサービスで、「ソーシャルレンディングサービス」とも呼ばれています。
これも、その形態から貸金業者に分類されています。
非貸金業者とは?
それでは、貸金業者に該当しない業者(非貸金業者)とはどのような業者でしょうか。
以下に具体的な業者を挙げていきますので、参考になさってください。
- 銀行(銀行カードローン)
- 信用金庫
- 信用組合
- 労働金庫
- 保険会社
- 証券金融会社
- 農協
- 漁協
- 質屋
- NPOバンク
これらの大半は、貸金業者と同じく個人や事業者に貸付を行っていますが(フリーローン、目的ローン、カードローンなど)、貸金業者には分類されませんのでご注意ください。
つまり、銀行のカードローンや信用組合の貸付けなどに関しては、総量規制の対象外になるため、年収の1/3以上でも借りることができてしまうというわけですね。
貸金業者かどうか調べる方法とは?
それでは、その会社が貸金業者かどうかを調べるためにはどうすればよいのでしょうか。簡単な方法は、以下の2点です。
- 登録番号が記載されているか確認する
- 金融庁のホームページを確認する
貸金業者には業者ごとに登録番号が付与されていますので、確認してみましょう。
業者のホームページを見ればどこかに必ず登録番号が記載されているので、探してみてください。
もし、貸金業者を名乗っていながら、登録番号を持っていない業者にあたった場合は、その業者は闇金などの違法業者なので、絶対に関わらないようにしてください。
金融庁のホームページも確認してみましょう。
金融庁のホームページには、「登録貸金業者情報検索」という、貸金業者の情報を検索することができる項目があります。
ここで気になる業者の詳細情報を入力して検索し、ヒットすれば貸金業者ということです。
貸金業者は申込者の借入額をどうやって把握しているか?
お話したとおり、貸金業者は総量規制を守るため、申込者を審査する際、他社でどれくらい借りているかを把握する必要があります。
では、貸金業者はどうやって申込者の借入状況を把握しているのでしょうか。
貸金業者は、申込者を審査する際には必ず、信用情報機関という機関に情報を照会しにいきます。
この信用情報機関には、信用情報(契約内容や利用履歴など)が記録されているため、申込者がどこでいくら借りているかが一目瞭然というわけです。
つまり、総量規制を免れるために、他のカード会社での借入額をごまかそうとしても、全てばれてしまうというわけですね。
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総量規制の対象外とされる借金とは?
貸金業者からの借金であるにも関わらず、借金の種類によっては総量規制の対象外とされる借金があります。
以下のような借金が挙げられます。
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これらの借金は貸金業者からの借入れとしてカウントされません。
住宅ローンを例にご説明すると、例えば、あなたの年収が360万円で、貸金業者Aで120万円の自動車ローンを組んでいると仮定します。
その場合、貸金業者Aで借りている120万円は貸金業者からの借入れとしてカウントされませんので、あなたは最大120万円を貸金業者から追加で借りることができるというわけです。
住宅ローン、自動車ローン、高額療養費などの生活に直結する借金が総量規制の対象外になるというのは、ある意味で配慮されているといえるでしょう。
これらの借金まで対象にされたら、本当にお金がなくてピンチのときに困ってしまうかもしれませんしね。
クレジットカードでのショッピング
クレジットカードには、キャッシング機能と、ショッピング機能があり、キャッシング機能を利用する場合は総量規制の対象となりますが、ショッピング機能を利用する場合は対象外になります。
ショッピング機能は、ただの後払い決済として扱われるので、借入れには含まれないというわけですね。
支払い方法による制限もなく、一括払い、分割払い、リボ払い、ボーナス払いの全てが総量規制の対象外として扱われます。
たとえば、あなたの年収が360万円と仮定して、既に貸金業者から120万円を借りている場合でも、クレジットカードのショッピング機能であれば問題なく利用できるというわけです。
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携帯電話本体の分割払い購入
経験のある方が多いと思いますが、携帯会社で契約する際は一般的に、毎月の料金に携帯電話本体の料金も分割払いにして上乗せしますね。
この場合も総量規制の対象外となります。
携帯電話が契約できないと困りますのでこの制度が助かりますね。
ショッピングローン
その他、高額な商品(家電など)を購入する際はショッピングローンを組むケースが多いですが、この場合も総量規制の対象外となります。
ショッピングローンの運営は、家電量販店であったり、クレジットカード会社であったりと様々です。
総量規制の「例外」となる借金とは?
総量規制から除外される借金についてはお分かりいただけたと思いますが、「例外」となる借金も存在します。
例外は、「対象外」とは少し異なります。
例外となる借金は以下のような借金が挙げられます。
- 緊急時の借入れ
- おまとめローン
- 配偶者貸付
- 個人事業者としての借入
- つなぎ資金としての借入
緊急時の借入れ
緊急時の借入れとは以下のようなケースです。
例えば、あなたの年収360万円で、貸金業者からの借入が総額で120万円あったと仮定します。その状態で、あなたが緊急で手術をすることになり、手術費のために、B社で新たに50万円のローンを申込んだとします。
この場合、「緊急時の借入れ」ということで、総量規制の例外となるため、あなたはB社から50万円借りることができるというわけです。
ただし、「対象外」ではなく、「例外」であるため、B者から借りた手術費は貸金業者からの借入れとしてカウントされることになります。
つまり、貸金業者からの借入は総額で170万円になってしまったので、それを120万円未満にしない限りは、追加で貸金業者から借りることができません。
おまとめローン
同じく、おまとめローンも「例外」になります。
例えば、あなたの年収が360万円で、貸金業者A社から80万円、貸金業者B社から40万円を借りていると仮定します。
ここで、あなたは低金利で貸し出しているC社でおまとめローンをしようと考え、C社から120万円を借りてA社、B社の借金を完済したとします。
このように、「顧客が一歩的に有利」になる借金も、総量規制の「例外」として扱われます。
配偶者貸付け
配偶者貸付けは、利用者本人と配偶者の年収を合計した金額のの1/3まで借りることができます。
例えば、あなたの年収が200万円で、奥様の年収が120万円であった場合、合計360万円となるので、1/3の120万円まで借りることができるというわけです。
個人事業主への貸付
個人事業主への貸付も総量規制の例外として扱われます。ただの個人では例外とならないので注意しましょう。
つなぎ資金としての借入
つなぎ資金としての借入も例外として扱われます。
ただし、預金取扱金融機関(日本銀行以外の銀行、信用金庫、労働金庫、信用組合)から融資を受けるまでの間とされています。
預金取扱金融機関から融資を受ける際、審査などで長期間待たされる場合があり、それまでの期間のつなぎ資金として借りる場合は例外として扱われるというわけです。
ただし、審査が通っていない状態では例外扱いにならないのでご注意ください。
審査は総量規制だけじゃない
これまでの説明で、総量規制によって借りれる額が制限されているということがお分かりいただけたと思います。
ただし、総量規制をクリアしたからといって、審査が通過するというわけではありません。
総量規制はあくまでも、貸金業者が申込者を審査をする上での一つの尺度に過ぎず、総量規制以外にも、契約内容や借入状況など、様々な角度で審査し、総合的に判断しています。
そのため、年収360万円だから最大120万円まで必ず借りられるというように、過度に期待しないほうが良いでしょう。
貸金業者がいくらまで貸し付けるかは、あくまでも審査次第ということを念頭に置いておきましょう。
「どのカード会社から」「総額いくら」「いつから」借り入れているかによって、任意整理によって分割できる回数は変動します。自分は任意整理するとどうなるか詳しく知りたい方は無料3分診断をご利用ください。
まとめ
- 総量規制とは、債務者を借り過ぎによる生活破綻から守る制度で、利用者の年収の1/3以上貸してはいけなうという規制
- 貸金業法や総量規制が適用されるのは「貸金業者」のみ
貸金業者は審査の際、信用情報機関で照会するので、他社での借入額はごまかせない - 住宅ローン、緊急時の借入、おまとめローンなど総量規制の対象外となる借金もある
- いくら借りれるかは総量規制のクリアだけでは決まらない